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スマホが視界にあるだけで集中力は落ちる?「15分説」を論文で検証
「スマホは触らなくても、視界に入るだけで集中力が落ちる」「一度気が散ると、元に戻るまで15分以上かかる」。SNSでこのような話を見て、勉強中のスマホをすぐに取り上げるべきか迷う保護者の方もいるでしょう。
先に結論です。
- スマホが近くにあると、作業記憶など一部の課題に小さな影響が出る可能性はあります。
- 直接追試やメタ分析を含めると結果は一致せず、「見えるだけで必ず集中力が落ちる」とは言えません。
- 「集中が戻るまで15分以上」という時間を、スマホの視界研究から直接示した論文は確認できませんでした。
- 通知を切って学習中だけ離して置くことは、効果の保証ではなく、実際の中断を減らす低コストな工夫として試せます。
この記事では、肯定的な結果だけでなく、再現できなかった研究や中高生の教室研究も同じ重さで整理します。
1.結論|「視界の話」と「15分説」は別の研究です
混同されているのは、二つの異なる研究です。一つ目は、スマホを机の上、ポケットや鞄、別室に置き、作業記憶や推理課題の成績を比べる研究。二つ目は、実際の職場で仕事が中断された後、元の仕事へ戻るまでの時間を観察する研究です。
「元の仕事を再開するまで」と「集中力が完全に回復するまで」も同じではありません。そのため、二つをつなげて「スマホが見えたら、15分以上集中できない」と表現することはできません。
似ているようで、別の2つの研究
研究A|スマホが近くにある研究
机上・鞄・別室で、作業記憶などを比較。小さな影響を示す研究はありますが、結果は一貫していません。
研究B|中断後の仕事復帰研究
実際の職場で、元の仕事へ戻るまでを観察。スマホ固有でも、集中力の完全回復時間でもありません。
だから「スマホが見えたら15分以上戻れない」とは言えません
2.2017年の有名研究では何を測ったのか
Wardらの2017年研究は、大学生を対象に、本人のスマホを「机の上」「ポケットまたは鞄」「別室」に置く条件を比べました。実験1の机上条件では画面を伏せ、全条件で着信音と振動を切りました。実験2の机上条件では画面を上向きにし、電源オン/オフも割り当てています。[1]
実験1の最終分析は520人、実験2は275人です。机上より別室のほうが、作業記憶など一部の認知課題で成績が高くなりました。一方、机上とポケット・鞄の差は明確ではなく、持続的注意の課題にも明確な差はありませんでした。測定したのは課題成績であり、集中が戻るまでの時間ではありません。
この研究から言えるのは「大学生の一部の課題で、置き場所による小さな差が報告された」までです。「スマホが視界に入れば誰でも集中力が落ちる」「中学生も同じ」と広げることはできません。
3.直接追試と3本のメタ分析ではどうなったか
2022年には、Wardらの実験2を確かめる事前登録された直接追試(先に検証方法を決めて行う再検証)が行われました。453人が参加し、事前に定めた除外後は409人でしたが、スマホの置き場所による作業記憶やGo/No-Go課題(反応を抑える力を見る課題)の差は再現されませんでした。[2]
研究をまとめるメタ分析も、結論は一枚岩ではありません。
スマートフォンでは、表を横にスクロールできます。
| メタ分析 | 結果の要点 |
|---|---|
| Parry 6領域、合計56効果量、7,093人 |
領域別に分析し、作業記憶の統合効果のみ小さな負の値。持続的注意などは明確な統合効果なし。[3] |
| Hartantoら 33研究、4,368人 |
認知課題全体の効果はほぼゼロで、有意差なし。[4] |
| Böttgerら 22研究、43効果量 |
全体では小さな負の効果。ただし研究間の違いが大きく、「使用」を含む研究も混在。[5] |
現在の研究全体からは、「スマホが近くにあるだけで認知能力全般が大きく下がる」とまでは言えません。一方で、作業記憶など負荷が高い一部の課題には、小さな影響が生じる可能性が残ります。「絶対に影響する」「まったく影響しない」のどちらも断定しないのが妥当です。
4.中高生の教室研究から分かること
この分野は大学生の実験が多く、中高生へそのまま当てはめられません。そこで参考になるのが、2025年に南アフリカの高校で行われた二つの実験です。13~18歳の生徒が、通常の教室環境で教師の実施する研究用課題に取り組みました。[6]
研究1は男子195人を対象に机上とバッグを比較しました。研究2は女子115人を対象に机上、バッグ、スマホを封筒に入れて封をし教師の机へ置く条件を比較しました。20分の推理課題では、机上のスマホによって成績が下がるという明確な証拠は得られませんでした。研究2ではバッグと封筒・教師机の比較に差もみられましたが、机上と各条件の差は明確ではなく、「遠くへ置くほど成績が上がる」という単純な結果ではありません。
少なくとも、大学生中心の実験だけで一律のスマホ禁止を正当化するのは慎重であるべきだと分かります。
5.「23分15秒」の本当の意味
「集中が戻るまで23分15秒」という数字もよく引用されます。しかし、元になったのはスマホ固有の研究ではありません。
2005年の査読論文では、IT・会計関連企業の情報労働者24人を700時間以上観察しました。中断された仕事のうち同日中に再開されたものは、元の仕事領域へ戻るまで平均25分26秒かかっていました。[7]
一方、2006年のGallupによる研究者インタビューでは、36人の観察について平均23分15秒と説明されています。[8] 対象人数も数字も異なるため、同じ研究の同じ数値として扱えません。
6.家庭でできる1週間の環境実験
研究結果が割れているなら、家庭でも「禁止」ではなく「本人に合う条件を比べる」方法が取れます。これは科学的な実験ではなく、学びやすい環境を見つけるための一週間の試行です。
- 1日目:普段どおり。予定した内容、終わった内容、予定外にスマホを確認した回数を本人が記録します。翌日は、前日に学んだ要点を3つ思い出すか、ワークの同種問題を3問解き、できた数を記録します。
- 2~4日目:通知を切り、学習区間だけ共用の充電場所へ。確認する時刻を先に決めます。
- 5~6日目:本人が置き場所を選ぶ。共用の充電場所、鞄、引き出しなど、続けやすい方法を試します。
- 7日目:親子で振り返る。予定と完了、中断回数、翌日の振り返り結果を見比べ、次週の方法を本人が決めます。
時間、教科、課題量はできるだけそろえます。変化がなければ、睡眠、課題の難しさ、開始時刻など別の要因も見直しましょう。スマホを離せば成績が上がると保証する方法ではありません。
7.禁止ではなく、距離を自分で選べる力を育てる
大学進学後は、保護者が毎回スマホを預かることはできません。必要なのは「スマホを持たない力」ではなく、目的に合わせて通知や距離を自分で調整できる力です。
計画し、試し、結果を振り返って次の方法を決める。この小さな循環は、自分の学び方を自分で整える練習になります。上板橋第一中・第二中・第三中、桜川中、志村第三中・第五中などの通学圏でも、集中に関するご相談の背景や合う方法は一人ひとり異なります。家庭のルールを決めるときも、本人を管理対象ではなく実験者にしてみてください。
8.よくある質問
Q1.スマホを視界から外せば、必ず集中できますか?
必ずとは言えません。研究結果は一致しておらず、睡眠、課題の難しさ、時間帯なども関係します。まず一週間、同じ教科や時間帯で比べてください。
Q2.伏せる、電源を切るだけでは足りませんか?
Wardらの実験1では、机上のスマホを伏せ、音と振動を切りました。実験2では机上で画面を上向きにし、電源オン/オフも割り当てています。ただし、研究全体の結果は一致しておらず、全員に別室が必要とは言えません。
Q3.鞄や引き出しに入れるだけでもよいですか?
よい方法です。大切なのは、予定外の確認が減るか、無理なく続くかです。鞄、引き出し、共用の充電場所を順番に試しても構いません。
Q4.集中が戻るまで15分、23分という話は本当ですか?
誰にでも当てはまる集中回復時間としては確認できませんでした。23分15秒は、成人の職場観察を紹介したインタビューで示された「元の仕事へ戻るまで」の平均です。
Q5.タイマーや音楽でスマホが必要な場合は?
必要な機能を起動してから手の届きにくい場所へ置く、通知を制限する、専用タイマーを使うなど、実際の操作回数を減らす方法を試してください。
Q6.保護者が取り上げたほうが早くありませんか?
短期的には早く見えても、長期目標は本人が環境を選べることです。「次の30分だけ充電場所へ置いて、違いを見てみない?」と期限を区切って提案し、結果を一緒に振り返りましょう。
スマホとの距離に、すべての家庭に共通する正解はありません。だからこそ、根拠を誇張せず、本人が続けられる方法を一緒に確かめることが大切です。
著者:小泉 正太(ラボ寺子屋代表)
大学進学まで見据え、その学年で備えるべきことを逆算しながら、生徒が自分で計画・実行・振り返りを行える指導に取り組んでいます。
参考文献
- Ward, A. F., et al. (2017). Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. DOI: 10.1086/691462
- Ruiz Pardo, A. C., & Minda, J. P. (2022). Reexamining the “brain drain” effect. DOI: 10.1016/j.actpsy.2022.103717
- Parry, D. A. (2024). Does the Mere Presence of a Smartphone Impact Cognitive Performance? A Meta-Analysis of the “Brain Drain Effect”. DOI: 10.1080/15213269.2023.2286647
- Hartanto, A., et al. (2024). The effect of mere presence of smartphone on cognitive functions. DOI: 10.1037/tmb0000123
- Böttger, T., et al. (2023). Does the Brain Drain Effect Really Exist? DOI: 10.3390/bs13090751
- le Roux, D. B., Parry, D. A., & Feldman, J. (2025). Does the mere presence of smartphones impact cognition in the high school classroom? DOI: 10.5817/CP2025-4-1
- Mark, G., et al. (2005). No Task Left Behind? DOI: 10.1145/1054972.1055017
- Robison, J. (2006). Too Many Interruptions at Work? Gallup掲載ページ

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